平和のダムは、休戦ラインからそう遠くない華川の北漢江上流に立つ、高さ125mのダムです。普段は水をほとんどためない洪水調節用のダムなので、巨大なコンクリートの壁が空っぽの谷をふさぐように立つ、独特の風景が広がります。冷戦時代の恐怖と政治、そしてその後の逆転劇まで、韓国現代史の一場面を伝えている場所です。
1986年、政府は、北朝鮮が建設中の金剛山ダムが崩壊すれば、とてつもない量の水がソウルを襲うおそれがあると発表しました。これに対応して1987年2月に平和のダムの工事が始まり、1989年に高さ80mの第1段階のダムが完成しました。工事費の一部である639億ウォンは、国民の寄付で集められました。ところが1993年、監査院の調査で、金剛山ダムの脅威が大きく誇張されていたことが明らかになり、ダムは長いあいだ政治的に利用されたと批判されました。
2002年、金剛山ダムから大量の水が突然流れ下ってきたため、政府はダムをかさ上げすることにしました。第2段階の工事は2005年10月に終わり、現在のダムは長さ601m、高さ125mで、韓国で最も高いダムです。最大貯水量は約26億トンです。1996年と1999年の大雨の際には水を一部ためて、下流の華川ダムが氾濫する危機を乗り越える助けになりました。
当時の政府は、金剛山ダムが崩壊すれば、水が「63ビルの中腹まで達しうる」と発表しました。寄付を集める際には、企業ごとに売上に応じて、事実上、金額を割り当てることもありました。監査の結果、実際の金剛山ダムの規模は発表よりはるかに小さく、最大限放流しても、ソウルの漢江沿いの一部の低地が浸水する程度だったことが分かりました。北朝鮮は、平和のダムの第1段階が完成したあと工事を止めていましたが、1999年に再開し、2003年に金剛山ダムを完成させました。第2段階のかさ上げには2,329億ウォンがかかり、全体の工事費は3,995億ウォンに達しました。