山房山(サンバンサン)を正面から向かい合って望む、低いオルム(岳)です。オルムとは、済州島に点在する小さな火山の丘のことです。西帰浦(ソギッポ)市安徳(アンドク)面甘山里(カムサンニ)の月羅峰は標高約200mと大きくはありませんが、頂上に立つと、山房山、兄弟島(ヒョンジェド)、和順(ファスン)沖の海が一つの画面に収まります。山すそには日本統治時代に住民を動員して掘った陣地洞窟が残っており、景色とあわせて、済州南西部の海岸に残る戦争の痕跡も見られます。
「月羅峰」という名前は、オルムの姿が月が昇る形に似ているところからついたといわれます。サルナシ(韓国語でタレ)の木が多く育つことから、タレオルムとも呼ばれます。漢拏山(ハルラサン)の麓に寄り添ってできた小さな火山体(側火山)で、北東と南西に、馬蹄形に片側が開いた噴火口が二つあります。済州でもっとも早い時期にできた火山のひとつに数えられることもあります。オルムの下の斜面にはミカン畑が続いており、冬には黄色いミカンと青いオルムが一緒に見られます。
探訪路は、オルムの南西側の斜面を回って頂上へと上っていきます。木製デッキが敷かれた区間が多く、比較的楽に登れます。斜面の下側は果樹園で、上に行くほどスギやグミ、マツの森が続き、頂上付近は森の木陰が濃くなります。頂上からは、西にそびえる山房山と和順沖の海、海に浮かぶ兄弟島が見え、東には軍山(クンサン)オルムと大坪(テピョン)マウルが見下ろせます。晴れた日には、日本軍がつくったアルトゥル飛行場のあたりの野原まで見えます。オルムの南の下には柱状節理が発達した海岸の断崖パクスギジョン、北には一年中水が流れる安徳渓谷があり、月羅峰はこの二つの名所のあいだに挟まれた位置にあります。
頂上から少し下ると、山の斜面に開いた洞窟の入口がいくつか見えます。日本軍が太平洋戦争の末期、和順港に上陸する米軍を阻むためにつくった陣地洞窟で、頂上の周辺に7基が残っています。
1945年2月、日本軍は本土決戦に備えた「決号作戦」を立て、そのうち済州島の防衛を担ったのが決7号作戦です。このとき済州には、新設の第58軍のもと約7万5千人の兵力が入り、月羅峰には約250人規模のモリヤマ部隊が駐屯していたと知られています。洞窟は済州の人々を強制動員して掘らせました。長さ50mあまり、幅3.5m、高さ2.5mの洞窟もあれば、長さ200mを超えて入口が二つある洞窟もあります。出口をいくつかの方向に設けて砲撃を避けながら移動できるようにし、洞窟の前方からは和順沖が見下ろせる位置を選んでいます。洞窟の中は暗く足元も不揃いなので、入口から見るだけで十分です。