安東(アンドン)・臨東面(イムドンミョン)の大谷里の村の丘に、樹齢500年ほどと推定されるアベマキ(コルク質の樹皮をもつナラの一種)が、四方に枝を広げています。高さ22.5m、胸の高さの幹まわり5.4mで、現在保護されているアベマキのなかで最も丈夫で、姿がよく発達した木とされ、1982年に天然記念物に指定されました。木が立つ大谷里583番地一帯は、保護区域としてあわせて管理されています。大きな木が好きな方なら、安東の東の道をドライブするついでに立ち寄ってみる価値があります。
アベマキは、韓国、中国、日本に育つナラの仲間で、幹の樹皮に厚いコルク層が発達するのが最大の特徴です。南向きの乾燥した土地や石の多い場所でもよく育ち、江原道(カンウォンド)と慶尚北道に特に多くあります。樹皮はコルクの材料に、ドングリはドトリムク(ドングリのゼリー)づくりに使われました。大谷里の木も、根元に近づくと、深い溝の入った分厚いコルク質の樹皮がはっきり見えます。幹は太く立ち上がってから何本にも分かれ、丸くて広い樹冠をつくっています。
軽くて水がしみにくいアベマキの樹皮は、暮らしのなかでも重宝されました。江原道の山あいでは、この樹皮をはがして屋根を葺いた「クルピ家」(アベマキの樹皮で葺いた家)を建てることもありました。よく似たクヌギとは葉の裏で見分けることができます。アベマキの葉は、裏が細かい毛のせいで白っぽく見えます。木の下に落ちた葉を一枚拾って裏返してみれば、違いがすぐ分かります。
この木は、長いあいだ村の精神的な支えでした。村の人々は、農作業を終えた7月のうち日柄のよい日を選んで、田んぼの道を直し草を刈ったあと、作業が終わると木の下に集まって祭祀を行い、料理を分け合って食べたといいます。春にこの木にコノハズクが飛んできて鳴くと、その年は豊作になると信じられてもいました。コノハズクは春に韓国へやってくる夏鳥で、その鳴き声は農繁期の始まりを知らせる合図でもありました。先祖代々、大切に守られてきた木なので民俗的な価値が大きく、国内でも指折りの大きく古いアベマキであるため、生物学的な保存価値も高いとされています。