格浦港(キョクポハン)から船で50分、辺山半島(ピョンサンバンド)の沖合に浮かぶ蝟島(ウィド)は、扶安郡(プアングン)で最も大きい島です。島の形がハリネズミ(蝟)に似ていることからこの名前がつきました。約20kmの海岸道路に沿って、海水浴場、夕陽の展望台、国家無形遺産のティペノリ(茅の船の祭り)を受け継いできた村が順に現れます。晩夏には、島の名前のついた白い花、蝟島サンサファ(ナツズイセンの仲間)が咲きます。
蝟島は、6つの有人島と24の無人島からなる蝟島面の中心の島です。島の南の海は、一時期イシモチの市(パシ)で名を馳せた七山漁場(チルサノジャン)でした。船が着く波長金港(パジャングムハン)ではハリネズミのモニュメントが旅人を迎え、鎮里(チルリ)には朝鮮時代に水軍が駐在した蝟島官衙が残っていて、全北特別自治道の文化遺産に指定されています。
島には、つらい記憶もあります。1993年10月10日、蝟島を出て格浦へ向かっていた西海フェリー号が高波で沈没し、292人が命を落としました。島には犠牲者をしのぶ慰霊塔が立っています。2003年には放射性廃棄物処理場の候補地として名前が挙がりましたが、扶安の住民の反対で実現しませんでした。
大里村(テリマウル)では、毎年旧暦の正月3日に、村の安寧と豊漁を祈る蝟島ティペノリが開かれます。浜辺の龍王祭に住民たちが加わり、茅(チガヤ)で編んだ小さな船(ティベ)に厄を載せて沖に流す瞬間が、祭りのクライマックスです。国家無形遺産に指定されていて、島には伝授館があります。
蝟島サンサファは、蝟島で最初に学界に報告されたヒガンバナ科の植物で、学名(Lycoris uydoensis)にも島の名前が入っています。白い花が8月末〜9月初めに、蝟島海水浴場とサンサファの丘一帯で咲きます。