東海(トンヘ)の海からそう遠くない場所に、花崗岩の渓谷と滝が続く奥深い山があります。頭陀山(トゥタサン)は江原道の東海市と三陟(サムチョク)市にまたがる山で、標高は資料によって1,353mまたは1,357mと紹介されています。頂上まで登る人よりも、山裾の武陵渓谷(ムルンギョゴク)を歩く人のほうがずっと多く、短い距離でも滝を2〜3か所見られるので、登山初心者にもぴったりです。
「頭陀」は、煩悩を払い落とす仏教の修行を意味します。山の姿が静かでありながら高くそびえ、修行に向いているとして僧侶たちが名づけたと伝えられます。三陟地方では古くから、村を守る霊験あらたかな山とされてきました。高麗の李承休(イ・スンヒュ)は官職を退いてこの山に住み、歴史書『帝王韻紀』を著したといわれます。
山の稜線には、険しい地形を生かして築かれた頭陀山城の跡が残っています。伝承では新羅時代の102年に初めて築かれ、朝鮮の太宗の時代の1414年に築き直されました。武陵渓谷の入口にある三和寺(サムファサ)は642年創建の伝承をもつお寺で、高麗の太祖・王建(ワン・ゴン)が後三国統一を祈願し、のちに三つの国の和合を意味する現在の名前になったと伝えられます。
頭陀山は、太白山脈の東の端で東西に水を分ける分水嶺です。頂上付近はとがっていて斜面も急で鋭い印象ですが、朴達嶺をはさんで隣り合う青玉山(チョンオクサン)はなだらかでどっしりしており、二つの山は対照的です。北の稜線にはチョウセンゴヨウと古い松が茂り、頂上付近にはツツジやササなどの高山植物の群落があります。山が深く険しいため、カモシカなどの野生動物も暮らしています。2002年には山林庁が選ぶ「韓国の百名山」にも入りました。
渓谷の道では、鶴巣台(ハクソデ)、観音瀑布(クァヌムポクポ)、仙女湯(ソンニョタン)といった名所を順に通ります。峡谷の摩天楼コースには人の横顔に似た岩があり、頭陀山城は義兵が倭軍と戦った場所としても伝わっています。