東海(トンヘ)市の墨湖港は、石炭とイカで栄えた港です。港の後ろの急な丘には、船乗りたちが集まって暮らしていた路地ノンゴルダムギルが壁画で彩られ、てっぺんの墨湖灯台からは港と東海(日本海)がひと目で見渡せます。KTXが停まる墨湖駅から歩いて行けるので、鉄道旅行で訪ねるのにぴったりの海辺です。
「墨湖」という名前は、海と水鳥が墨のように黒く見えたことに由来するという説が伝わっています。小さな漁港だった墨湖は、1941年に三陟(サムチョク)と太白(テベク)の炭鉱の無煙炭を積み出す港として本格的に開発されました(開港年は1937年と紹介されることもあります)。その後、セメントや石灰石もここから船に積まれ、この港を中心に現在の東海市が育ちました。
1960〜90年代は、イカ釣りの前進基地でした。「イカといえば墨湖」といわれるほど船が集まりましたが、つらい記憶もあります。1976年、墨湖港を出て鬱陵島(ウルルンド)近くの大和堆(テファトゥェ)漁場へ向かった漁船が嵐で一斉に沈没し、408人が亡くなるか行方不明になりました。国内最大の漁船海難事故として記録されています。
貨物機能が隣の東海港に移ると、墨湖港は観光の港に変わりました。2018年3月、中央埠頭に新しい旅客ターミナルがオープンし、鬱陵島行きの旅客船がここから出港しています。