江原道・横城郡(フェンソングン)の安興面(アンフンミョン)は、「チンパン」(蒸しパン)ひとつで名が知られるようになった町です。マッコリで生地を膨らませ、自家製のあんこを入れて手でこねる安興チンパンを売る店が、面の中心部の通り沿いに集まっています。雉岳山(チアクサン)や平昌方面へ向かう途中で立ち寄り、蒸したてのチンパンを味わう場所です。
嶺東(ヨンドン)高速道路ができる前、安興はソウルと嶺東地方を行き来する人々が休んでいく道の要所でした。旅人たちはここでチンパンを食べて空腹を満たし、残りの道中で食べるチンパンを持って出発したといいます。小豆が、いたずら好きなトッケビ(鬼)を追い払ったという話も伝わっています。このチンパンが再び注目され始めたのは1960年代以降で、2000年代初めには全国から訪れる人が増え、機械で作る業者も現れました。今も、手作りのチンパンの店が9軒残っています。
小麦粉の生地にマッコリを入れて膨らませるのがコツです。生地は三回に分けて熟成させ、最後の段階では、日なたに15分ほど置いて発酵を仕上げます。あんこは、横城を中心に契約栽培した国産の小豆を煮て煮詰め、手で作ります。そのため、皮は薄くふんわりしていて、あんこは甘すぎません。冬になるとコンビニの蒸し器で出会う「ホッパン」は、1971年にある製菓会社が発売した商品名から定着した言葉です。安興チンパンは、店ごとにその日の生地を熟成させて、蒸し器ですぐに蒸し上げる手作りのチンパンなので、同じあんまんでも、作り方がずいぶん違います。
祭りの期間中は、住民3,000人余りが総出でお客さんを迎え、チンパンづくり体験や公演が三日間ずっと続きます。2022年に14回目を迎えるほど、歴史ある地域のイベントです。横城は韓牛(ハヌ)の産地としても有名なので、チンパンでおやつを食べ、横城の町で韓牛の食事をするという日程を組む人も多くいます。