冠岳山は、ソウルの南にそびえる標高632mの岩山で、地下鉄の駅を降りてすぐに山歩きを始められます。頂上の恋主台(ヨンジュデ)には、切り立った断崖の上に小さな庵がぶら下がるように建っていて、ソウル近郊の山のなかでも、もっともドラマチックな風景を見せてくれます。晴れた日には、頂上からソウルの都心と漢江(ハンガン)が一望できます。
「冠岳」という名前は、山の形が冠(官人のかぶる笠)に似ていることからついたといいます。ソウルの冠岳区と衿川区(クムチョング)、京畿道の安養(アニャン)市と果川(クァチョン)市にまたがり、昔から京畿道の五つの名山「京畿五岳」に数えられてきました。花崗岩の峰と深い谷が多く、登り下りの楽しみがあり、ソウル側は1968年に都市自然公園に指定されました。資料によっては毎年500万〜700万人が訪れるといわれるほど、ソウル市民に親しまれている山です。昔の人は、冠岳山が火の気を抱えていると考え、崇礼門(スンネムン)の扁額を縦にかけたのも、この火の気を防ぐためだったという話が伝わっています。
恋主庵を移して建てた孝寧大君は、太宗の次男です。父の意をくんで、王位を弟の忠寧大君、つまり世宗に譲った人物として知られています。明の使臣をもてなす席では酒を飲まなければならないことが多かったのに、孝寧大君は一滴も飲めなかったという記録が伝わっています。山のあちこちには、学者や文人が残した文字もあります。尤庵(ウアム)宋時烈(ソン・シヨル)は崔致遠(チェ・チウォン)の詩句を、秋史(チュサ)金正喜(キム・ジョンヒ)は申緯(シン・ウィ)の号を、岩に刻みました。