釜山の中心部から北へ向かい、金井山(クムジョンサン)の麓にたどり着くと、通りのあちこちに「温泉」の看板が掲げられた街があります。東萊温泉は、新羅の時代から名が知られていた韓国でもっとも古い温泉のひとつで、今はこの一帯を温泉場(オンチョンジャン)と呼ぶのが一般的です。大型の温泉施設でゆっくり浸かることも、通りの無料露天足湯で少し足だけ浸けて通り過ぎることもできます。
東萊温泉に関するもっとも古い記録は、『三国遺事』にあります。新羅の宰相・忠元公(チュンウォンゴン)がここで入浴して帰ったという内容です。朝鮮時代の地理書『新増東国輿地勝覧』には、お湯が卵を茹でられるほど熱く、病人が入浴するとよく治ると記され、新羅の王が何度も訪れたという話も伝わっています。
温泉の始まりには説話もあります。足を引きずっていたおばあさんが、同じように足を引きずっていた一羽の鶴が田んぼで3日間過ごし、すっかり元気に飛び去るのを見て、その場所へ行ってみたところ、熱い湯が湧いていたといいます。おばあさんもその湯に足を浸して病気が治った、という話です。近代に入ると、1883年の開港の頃から日本人が本格的に開発し、市電やバスが走るようになって温泉都市として大きくなりました。
温泉水は、摂氏55度前後のアルカリ性食塩泉です。金井山の方に染み込んだ地下水が、断層の割れ目に沿って地下3〜4kmの深さまで下りて温められ、再び湧き上がってくるとみられています。温井改建碑のある場所は、1960年代まで釜山市が温泉水を汲み上げていた場所でもあります。